Kenji Shirokane, Yusuke Kurosaki, Takaaki Sato,* and Noritaka Chida*
Angew. Chem. Int. Ed. early view
DOI: 10.1002/anie.201001127
通常アミドは各種カルボン酸誘導体のなかで最もカルボニル基での反応性が低いことから、官能基変換には扱いにくい。その点Weinrebアミドやモルホリンアミドは金属求核種の付加の後に安定なキレート構造を形成し、加水分解によりケトン(アルデヒド)を与えることから有機合成に頻用される。しかしアミドでありながら元々有する窒素原子を活かした含窒素化合物の合成には用いることができない点は問題ともいえる。本報告は、Weinreb型のキレート構造の開裂を窒素部位ではなく、カルボニル由来の酸素部位で行うことでイミニウムイオンを形成、さらなる求核種との反応によりアミン誘導体の合成を行うというものだ。
アミドからアルキル基を導入しつつアミンを合成する方法は各種報告されており、いずれも酸素原子を修飾することで脱離能を上げるていることがポイントとなっている。本報告ではルイス酸の利用によりWeinreb型環状キレート構造を開裂させて、イミニウム中間体が形成されることを想定している。通常のプロトン酸による後処理工程では、キレート構造の開裂によりアミンが生成するわけで、これを無水条件でルイス酸を使用したらどうなるかと考えるに至った点がポイントだろう。
DIBAL-Hによる還元の後に、各種ルイス酸と求核種を検討した所、Sc(OTf)3をルイス酸、アリルトリブチルスズを求核種とすると良好な収率で目的のN-メトキシアミン誘導体が得られることを見いだした。求核種としてはケイ素種も利用可能であり、例えばTMS-CNを用いることも可能だ。この際には自身のルイス酸性によっても反応は進行するものの、やはりルイス酸として塩化スズ(IV)を用いた方が収率は向上する。いずれにせよ、中間体イミニウムカチオンの高い反応性ゆえに、ケイ素やスズなどの他の官能基との共存性が比較的高いものを求核種として用いているのは良い点に感じられる。また著者らは15員環アミドを用いた例や、分子内アリルシラン部位を求核種としたものを実施している。前者は大員環合成の際に、N-アルキル化よりも各種縮合剤を利用したアミド化の方が進行しやすいことから、魅力的な例だと言えるだろう。
欲を言えば、N-メトキシアミンのままでは使用しにくいので、N-O結合の開裂やニトロンへの変換など何かしらの合成化学上の有用性を示す例が欲しいところだ。また容易に想像可能な1つ目の還元をアルキル化剤へと変更することに関しては、既に検討中とのことで続報を期待したい。
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