Guillaume Pelletier, William S. Bechara and Andr B. Charette*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja105194s
アミドカルボニル基の低反応性については、既に本ブログでもいくつか取りあげており(例えばWeinrebアミドの還元によるアミン合成やTf2Oを用いたアミドの2重アルキル化)、エステルとは異なり合成中間体として用いるには使いにくいということを述べた。本論文はこのようなアミドに関する報告で、2級アミドの還元を適切に条件を変えることで、イミン/アルデヒド/アミンと作り分けるというものだ。
著者らは既に3級アミドをTf2OとHantzschエステルとの組み合わせにより、温和な条件でアミンへと還元できることを報告している。この流れで2級アミドについて、Tf2Oによるアミドの活性化を調べることとしたのだろう。前述の条件を2級アミドについて試した所、イミンと還元体のアミンの比率が約1:1だったため、より弱い還元剤を用いることでイミンを選択的に得ることができるだろうと考えた。ジヒドロピリジン系還元剤よりも反応性が低いとされているシラン系還元剤を検討した所、トリエチルシランを用いた場合にイミン選択的に生成物を得た。さらに反応系を塩基性添加剤を用いて系中の酸性を和らげることで収率が向上することを見いだし、最終的には2-フルオロピリジンが添加剤として最適であると判明した。また反応溶液を塩基性条件で後処理することでイミンが、クエン酸バッファーで後処理することでアルデヒドが得られるような工夫も行っている。
本条件をさまざまな基質に対して適応した所、アミドよりもはるかに還元されやすいアルデヒドやアジドなどを有する基質に対しても高い収率で目的のイミンやアルデヒドを得ているのが驚きだ。α位に不斉点を有するアミドに対しても、若干のeeの低下がみられるもののラセミ化は非常に遅いという結果を得ている。興味深いことに、著者らはイミン形成後にHantzschエステルを添加することで、イミニウムイオンが選択的に還元されアミンが得られることも示している。これによって2級アミドから適切に条件を選択することでイミン/アルデヒド/アミンとを作り分けられることになる。
共通の原料から、条件を変えることで異なった生成物が得られる反応は、多品種少量合成を行うことの多いラボスケールでの研究には魅力的だ。またこのような反応の開発には、各工程における反応機構の詳細な解析が必要なことも多く、素反応の理解を深めることにも繋がるだろう。こういう論文を読むたびに、まだこんなモノが残っていたんだなあと感動するこのごろ。多くの場合、学部教科書がネタ探しによいというのは真なのでしょう。
2010/08/28
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿