Naila Assem, Aditya Natarajan and Andrei K. Yudin*
J. Am. Chem. Soc., Article ASAP
DOI: 10.1021/ja104488d
ペプチド化合物が生体内で重要な役割を果たしていることはあらためて述べるまでもない。そのため非天然型アミノ酸を導入したり、α位を4級にするなど構造の一部を化学的に変換することで新たな機能を有する分子を生み出そうという試みが活発に行われている。その一例として、ペプチド結合の一部を還元し2級アミンとしたものがあげられる。この構造はプロテアーゼ阻害剤の構造によく見られると同時に、生理的pHによりアミンがプロトン化され水素結合供与体となることから通常のペプチドとは異なる構造を取ることが知られており興味深い部分構造である。本報告は、このような還元型擬ペプチド構造の合成法に関するものだ。
著者のYudinらはこれまでもアジリジンアルデヒドの特徴的な反応性を活かした化学を展開しており、本論文ではそこにペプチドの化学でよく用いられる硫黄から窒素へのアシル基の移動を絡めたことになる。C末端のチオカルボン酸がアジリジンを求核的に開環することで、システインによるS-アシル体と類似の中間体を実現可能だと考えたのだろう。実際に反応を行った所、アジリジン開環は末端選択的におき、アシル基の転位は5員環を経由して望みのシステイン相当の擬ペプチド体が得られた。また生成物側鎖のチオール基はアジリジン開環には関与しないようだ。
実際に様々なペプチドとアジリジンを用いてカップリングを行っており、一例を除きラセミ化は進行しないようだ。またペプチドのカップリングでは官能基選択的な結合形成が望ましく、一例ではあるがC末端フリーのアジリジンを用いても良好な収率で目的物を得ているのはすばらしい。Raney Niの利用により硫黄原子を除去することで、システイン以外にもアラニンやフェニルアラニンに相当する生成物も合成している。
Direct Arylationに多大な貢献をしたFagnouが若くして亡くなった今、Yudinはカナダ期待の星だと言えるだろう。今後も彼の化学には要注目である。
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