2010/10/13

Efficient Ring-Closing Metathesis of Alkenyl Bromides

Michele Gatti, Emma Drinkel, Linglin Wu, Ivano Pusterla, Fiona Gaggia, and Reto Dorta*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja108253f

RCMは5~7員環程度の環を形成するのには特に信頼性の高い方法論であるが、基質によっては望みの反応が進行しない場合もある。その一つの例として生成物がハロゲン化ビニルとなるRCMがあり、生成物のその後の有用性を考えると解決すべき課題といえる。本報告ではこのようなブロモアルケンを用いたRCMを基質の置換基を調節することで達成している。

クロロアルケンを用いた反応例は高触媒量であるなどの欠点はあるものの既に存在していたので、著者らはマロン酸エステルから誘導したブロモアルケン-末端アルケンを用いて検討を行った。既存の報告例通り、各種触媒を用いても反応が進行しなかったことから、重ベンゼン中でのNMR実験を行うこととした。


興味深いことに末端アルケンを持たない基質では全く反応が進行しないのに対し、末端アルケンを有する基質ではスチレンの生成と触媒の分解が観測された。すなわち望みの反応が進行するなら、まず末端アルケンとの交差メタセシスが起き、その後ブロモアルケンとの閉環メタセシスが起きることが必要であると考えられた。著者らはブロモアルケンに置換基を導入することで触媒の安定性や反応性を調整できるのではないかと考えて置換基の導入を行った。検討の結果、臭素原子に対してcisにフェニル基を導入することで反応性が大幅に向上し、触媒量2mol%で30分、90%収率にて目的物を得た。


さまざまな基質に対して反応を行ったところ、マロン酸誘導体のみならずTs-アミドやエーテル誘導体を用いても5,6,7員環の臭化ビニル体を高収率にて得た。既存の報告があるようにクロロアルケンを用いた場合の方が反応性は高く、この場合には4置換オレフィンの合成にも成功している。一部の基質を除いて反応濃度も0.1Mであり、十分実用的だろう。反応機構としてはcisの位置にフェニル基を導入したことで、閉環メタセシスの際に触媒の接近を妨げることなく、反応後の触媒が安定なベンジリデンルテニウムとなることが鍵であるようだ。

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