2010/10/11

Regioselective Palladium-Catalyzed Arylation of 4-Chloropyrazoles

Carlos Mateos*, Javier Mendiola*, Mercedes Carpintero, and Jos Miguel Mnguez
Org. Lett., DOI: 10.1021/ol1020898

反応条件の最適化検討では、各パラメータに関して1変数を振りながら最適化を行っていくのが普通だろう。しかし条件検討に時間がかかり過ぎてしまい、化合物を迅速に供給する必要がある場合には問題が生じやすい。このような場合に、実験計画法に基づいて複数のパラメータを同時に動かしつつ検討を行うと検討時間を短縮できる可能性がある。本論文でも実験計画法を効率的に用いて素早く条件の最適化を行っている。

著者らはSAR研究の一環として5-アリール-1-メチルピラゾール誘導体を迅速に供給する必要が生じた。1-メチルピラゾールを用いて既存のdirect arylation条件で反応を行った所、反応性はC5>C4>>C3であり、4,5-二置換体もかなりの割合で生成してきてしまった。4位をハロゲン原子でブロックしたうえで反応を行うこととした。4-クロロと4-ブロモの基質で反応を行った所、4-クロロ体の方が反応性が高かったものの3位と5位の選択性が約1:1であった。そこで4-クロロ体を用いて条件検討を行うこととした。


溶媒、塩基、触媒、配位子、添加剤の組み合わせによりC3/C5選択性とC5体の収率を最適化することとした。文献より各要素で用いる条件を抽出したところ、全組合わせは7200通りになった。この条件から実験計画法により48通りの条件に絞り込んで、実験を行い、HPLCによる分析で各反応における収率と位置選択性に関するデータを取得した。得られたデータをJMP(ジャンプ)による統計解析を行った結果、塩基としてBu4NOAcを用いることが最も重要であり、その他の要素に関しては統計的な有意はなかった。こうして得たデータから、収率と選択性に関して、それぞれを最大化するであろう2条件を作成し、反応を行ったところ、収率に関して最適化を行った条件がより優れていると判明した。得られた最適条件を他の基質についても行ったところ、電子吸引基、供与基置換の芳香環はともに収率よく導入可能だが、オルト位置換のものは収率が低下する傾向にある。またピリジン環のようなヘテロ芳香族も導入可能であった。

このような実験計画法を駆使した最適化は、最短で狙った反応を最適化できる可能性を秘めているものの、現実的には本報告のように類似の反応からある程度条件が絞れる場合に効果を発揮する可能性が高い。それでもこれだけ計算機が進んだ時代に、30年前と同じスクリーニング法をしているのも能がないとは思うので、何かしら工夫しながら少しずつ取り入れていく意識改革は必要だろう。個人的にはファイザーのケモインフォマティクス/データマイニングの論文はいつもいいなと感じていて、すぐに何かの役に立つかわからないけれどこういった解析のクセを付けたいなと思っている。実験計画法によるアプローチはアカデミアより企業の方が盛んで、プロセス検討などではよく使われているらしいが、本論文のように探索段階で用いるのは珍しいのではないかなと感じたが実際のところどうなんでしょう。

3 件のコメント:

  1. ファイザーのケモインフォマティクス/データマイニングの論文は、どうやったらみることができますか?
    よろしかったら、教えてください。お願いします。

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  2. 最近のですとメドケム日記さんでもとりあげられていたACS Chem. Neurosci., 2010, 1, 420.(上記リンク)あたりでしょうか。

    こういう類のはデータの山からどれだけ意味のある情報を抽出してこれるからかが肝なので、対象が化学データかアンケートかアクセスログかなどの違いがあるだけで、本質的にはウェブマーケティングなどと変わらないのかなと思います。
    ケモインフォマティクスは成書も色々あるので興味を持ったら勉強してみてください。

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  3. ご連絡ありがとうございます。
    いつも楽しみに見させていただいています。
    大変勉強になります。
    これからもがんばってください。

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