2010/10/05

A New Palladium Precatalyst Allows for the Suzuki−Miyaura Coupling Reactions of Unstable Boronic Acids

Tom Kinzel, Yong Zhang, and Stephen L. Buchwald*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja1073799

鈴木カップリングが有用な反応であることは改めて述べるまでもないだろう。しかし、通常高温条件が必要となり、ヘテロアリールや多フッ素置換芳香環のような対応するホウ酸が不安定な化合物では分解速度が高いために目的物が収率よく得られないことが多い。このような問題に対しては、1) 安定なホウ素試薬を用いる、2) 分解の起きないような温和な条件でも反応する触媒を用いる、といった方針が考えられる。前者の例として近年最も用いられているのは本ブログでも既に何度か紹介したMIDAボロネート(実際にはホウ酸のスローリリース)ということになる。本論文は後者のアプローチに当たり、高活性なパラジウム触媒について報告している。

検討を重ねた結果、Pdホスフィン錯体がハロゲン化アリールに酸化的付加した触媒前駆体を用いると低温で速やかに反応が進行することを見いだした。Pd(OAc)2 やPd2(dba)3と配位子の組み合わせでは良い結果が得られていないことから、触媒前駆体を使うことの重要性がわかる。しかしながら、初期に見いだした前駆体は調製が困難であり、かつ前駆体由来のアリール基が導入されたカップリング体が少量ながら生成してしまうという欠点があった。そこで調製が容易で、温和な条件で触媒が生成する前駆体の探索を行い、2-アミノビフェニルの利用に至った。この前駆体はアニリン部位の高い酸性度ために、以前の脂肪族アミンよりもより温和に触媒を生成させられることが期待できる。


得られた触媒前駆体を用いて、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、2-フリル、2-チエニルなど、不安定と言われるホウ酸を用いて期待通りに短時間で高い収率でカップリング体を得ることに成功している。例えば上で示した例は室温/30分で反応が完結しており、その反応性の高さに驚かされる。

MIDAボロネートはアルドリッチ社から入手できる種類も増えているものの、多少複雑なホウ酸では自ら調製しなければならず面倒だ。そういった場合には、ホウ酸を直接用いることのできる本反応に軍配があがるだろう。どんな場合にも選択肢は複数ある方がよく、既に大方解決されたかに見える課題に対しても違った視点からのアプローチは重要だろう。

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