2010/10/26

Rh(II) Carbene-Promoted Activation of the Anomeric C−H Bond of Carbohydrates

Mlissa Boultadakis-Arapinis, Pascale Lemoine, Serge Turcaud, Laurent Micouin, and Thomas Lecourt*
J. Am. Chem. Soc., DOI: 10.1021/ja1054065

糖類は生体内で重要な作用を有することから、主骨格の何れかの炭素を4置換にすることで生理活性などへどのような影響が出るかを調べる事に興味がもたれている。1位炭素を4置換にするにはラクトンへの求核付加と生じたヘミアセタールからグリコシル化することでケトピラノシドを合成する。しかし、4置換炭素となったことでグリコシル供与体の嵩高さから、受容側の大きさによっては反応が進行しにくかったり、通常2位のアシル基を足がかりとして行うグリコシル化の選択性が低下するなどの欠点があった。本論文では異なったアプローチとして、ロジウムカルベノイドによるC-H結合への選択的な挿入を用いたケトピラノシド合成法を報告している。

望みのC-H結合以外にも挿入する可能性など副反応は考えられたものの、ピラノース誘導体を用いてロジウム源の検討を行ったところ、Rh2(OAc)4を用いた場合に収率よく選択的に反応が進行した。3位の保護基としてはPivの他にはTBDMSを用いても良い結果が得られている。得られた知見を基にグリコシル結合を有する基質でも反応を行っている。α-グリコシル体に相当する基質では速やかに反応が進行したものの、β-グリコシル体では他の結合への挿入も起こってしまったことから多少の条件検討が必要だったとのことだ。また挿入により得られたラクタムはアルミニウムアミドの条件でWeinrebアミドへと定量的に開環している。


既存の方法論ではアノマー位の選択性を出す事が難しい場合もあった点を考えると本方法論はその点に関しては申し分ない。一方で反応後の立体反転は難しい印象をうけることから、2位の立体に依存してアノマー位の立体が決まる点が本方法論の特徴でもあり欠点でもある。いずれにせよシンプルな化学であるが着眼点がおもしろい論文だ。

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