2010/10/27

Iron-Facilitated Direct Oxidative C−H Transformation to Alkenyl Nitriles

Chong Qin and Ning Jiao*
J. Am. Chem. Soc., DOI:10.1021/ja1070202

酸化剤と遷移金属触媒を用いてアリル位のC-H結合を直接官能基化する方法論は、近年発展が著しい分野だ。本報告ではπ-アリル型の中間体を経てアルケニルニトリルを合成する反応に関するもので、反応を通じて3つのC-H結合が切断されることなる。

著者らはトルエンをベンゾニトリルに変換する反応を報告しており、まずは類似の条件から検討を開始したが、アリルベンゼンを基質とした反応ではまったく生成物が得られなかった。そこで各種触媒、酸化剤を検討した所、塩化鉄(II)を触媒とし、DDQを酸化剤とすることで望みのシンナムニトリルを高い収率で得られる事を見いだした。


アリルベンゼンだけでなく、(E)-プロペニルベンゼン、(Z)-プロペニルベンゼンを基質とした場合にも同じシンナムニトリルが得られる事から、π-アリル中間体を経由していることが示唆された。また重水素化実験などにより、最初のアリル位C-H結合の切断が律速段階であることも明らかとなった。反応の最終物としてニトリルが合成されるため、末端アジド中間体と分岐鎖アジドとの平衡混合物の中で、末端アジドから反応が進行すると考えられている。

各種基質に対して反応を行った所、芳香環と共役したニトリル合成において有効な反応のようだが、これはSET段階での電子供与能によるのだろう。共役した1,3-ジエンだけでなく1,4-ジエンでも同じ生成物を与え、また3置換アルケンが生成するような基質に対しては収率が低めとなっている。

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