2010/05/12

Copper-Mediated Aerobic Oxidative Trifluoromethylation of Terminal Alkynes with Me3SiCF3

Lingling Chu† and Feng-Ling Qing*
DOI: 10.1021/ja102175w

既にこのブログでも何度か取りあげているが、フッ素含有化合物群はその特徴的な物性から農薬、医薬品、材料など種々の化学において有用な化合物となりえる。
トリフルオロメチル基を導入する反応としては遷移金属ーCF3種とアリールハライドとのクロスカップリング反応や、Ruppert試薬(TMS-CF3)などの求核種を用いたカルボニル基への付加反応などがよく使われる反応だろう。本報告では、一価銅を用いた末端アルキンとRuppert試薬との酸化的カップリングを実現するという珍しい反応だ。

ヨウ化銅(I)存在下、フェニルアセチレンとRuppert試薬との反応にて条件検討を行ったところ、アセチレン同士がカップリングしたジインが得られるのみであった。このことよりケイ素から銅へのCF3基の移動が遅いと考えられるため、CuCF3種を系中にて生成させた状態を得るためにアセチレンをシリンジポンプによる定速添加を試みた。すると低収率ながら目的物が得られ、さらに配位子の検討とRuppet試薬の当量(5 equiv.)を最適化することで93%収率にまで向上した。また空気条件から酸素雰囲気下にすることで望みの反応はほとんど進行しなくなることは、Cu-CF3種の不安定性を示しているように思われる。



上記で得た最適条件下、各種アセチレンの検討を行ってみたところ、種々置換基を有する芳香族アセチレンのみならず脂肪族アセチレンでも良好な収率で目的物が得られている。特にさらなる官能基導入のあしがかりとなりうるブロモフェニル基に適応できる点は強みだろう。また2−ピリジルアセチレンは様々な分野で用いられるユニットであり有用性は高い。

想定メカニズムは提唱されているものの、反応機構解析はほとんどなされていないに等しく、今後の課題といえるだろう。反応の形式としては珍しいが生成物の有用性やインパクトに欠けるような気がしなくもないけれど、例えばアルキンへのハイドロボレーションを経れば様々な展開が可能となるだろうし、利用者の創造力しだいで面白い使い方もできそうだ。

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