2010/05/18

Rh(I)-Catalyzed Olefin Hydroarylation with Electron-Deficient Perfluoroarenes

Zhong-Ming Sun, Jing Zhang, Rajith S. Manan and Pinjing Zhao*
DOI: 10.1021/ja102575d

近年のC-H活性化反応の発展はめざましく、特に近接基を利用したものは反応例も蓄積されてきていると言えるだろう。一方で足がかりとなる官能基を有しない基質ではインドールに代表される求核性が高い基質が選ばれることが多く、電子不足アレーンを用いた例はまだまだ少ないといえる。本論文では多置換フルオロベンゼンを用いた、電子不足オレフィンへのマイケル付加反応を報告している。

著者らの以前の報告、ロジウム触媒を用いた多置換フルオロ安息香酸の脱炭酸型官能基化からの推定により、脱炭酸を経ることなく芳香環を直接官能基化することができるのではないだろうかと考えたようだ。その際、水系条件では中間体ロジウムエノラートの水和によりマイケル付加体が得られると推定した。



そこで、水系ジオキサンを反応溶媒として水酸化ロジウムシクロオクタジエン錯体と配位子を用いて条件検討を行った。その結果、マイケル付加体とβー脱離に由来するHeck型生成物との選択性を最大で>50:1にまですることができた。
分子内塩基として水酸化ロジウムを用いていることから、引き抜かれるプロトンの酸性度が反応の進行に影響を与えることが推察される。実際、置換フッ素の数が反応の進行に重要であり、オルトジフルオロベンゼンとアクリル酸誘導体との反応では7%収率にとどまった。またオレフィン側も、スチレンなどの反応性の低い基質では反応は進行しなかった。



また本論文のもう1つの特徴として、反応条件を変更し無水条件とすることでHeck型生成物を優勢に取得することが可能なことがあげられる。この際は脱離したRh-H錯体のスカベンジャーとしてアクリル酸誘導体を4当量用いなければならない点には注意したい。

最初から狙っていたのかどうかはわからないけれど、水の有無で反応のパスを制御できる可能性に着目したのが上手いと感じさせる論文だった。

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