2010/05/24

Directed Lithiation of N-Benzenesulfonyl-3-bromopyrrole

Tsutomu Fukuda, Takeshi Ohta, Ei-ichi Sudo and Masatomo Iwao*
DOI: 10.1021/ol100810c

ピロール環などの複素環は水素結合能を有する芳香族ということもあり、マテリアル、医薬など機能性分子において重要なユニットであり、置換ピロールの合成手法に習熟しておくことは重要だ。ピロール分子は窒素フリーまたはアルキル置換では反応性が高く、容易に自己縮合を繰り返してしまうが、pTs基などで窒素上の不対電子をマスクしてあげることでリチウム化などが容易に進行するようになる。本論文もこのようなN-スルホニル置換ピロールのリチウム化に関する面白い知見を含んだ報告だ。

Nーベンゼンスルホニルー3−ブロモピロールをLDAでリチウム化し、求電子剤を加えたところ、用いる求電子剤の種類により2位と5位の選択性に差が出たことが本論文の発端だ。傾向として、反応性の高い求電子剤(クロロギ酸メチルなど)では2位選択的に、反応性の低い求電子剤(DMFなど)では5位選択的に反応することがわかり、系中での2位と5位リチウムの平衡が考えられた。

そこで、筆者らはNーベンゼンスルホニルー2、4−ジブロモピロールを用いて、まずはnーブチルリチウムで2位をハロゲンーリチウム交換によりリチウム化した後(前述の5位に相当)、ジイソプロピルアミンを用いて処理をした。その後に反応性の高い求電子剤(クロロギ酸メチル)を加えたところ系中にはいなかったはずの5位で反応した化合物(前述の2位に相当)が得られた。



この実験事実から以下の二つが推測された。すなわち、1)臭素の電子吸引性のためにより安定であるC−2リチウム種とC−5リチウム種は3−ブロモピロールを介して平衡状態にある、2)臭素の電子吸引性により反応性の低下したC−2リチウム種では反応性の高い求電子剤としか反応できず、反応性の低い求電子剤とはC−5位で反応する、という推測だ。

論文中のジブロモピロールを用いた実験はうまく設計されていて、科学的におもしろいことに加え、3位臭素を足がかりにして、さらなる変換の可能性を持つことも合成化学的側面からも魅力的である。強いて言えば、条件検討のTable1が2位と5位の脱プロトン化の選択性に拘りすぎてしまっていて、論文全体の構成からすると浮いてしまっている印象を受けた。

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