2010/05/10

Gold(I)-Catalyzed Rearrangement of Propargyl Benzyl Ethers

Benoit Bolte, Yann Odabachian and Fabien Gagosz*
DOI: 10.1021/ja1020469

アレンは構造化学的にも合成化学的にも興味深い化合物であり、それゆえアレンの新規合成法の開発はおもしろい研究テーマのひとつだ。
本論文は金触媒を用いたプロパルギルエーテルからの分子内ヒドリド移動を用いたアレン合成に関する報告であり、多置換アレンが温和な条件にて得られる点が優れている。

著者らはすでに金触媒を用いたアルキンへの分子内1,5-ヒドリドシフトを用いた反応を見いだしていた。今回はプロパルギルエーテルを用いることで、ヒドリドシフト後にエーテル部位がアルデヒドとして脱離可能ではないかという着想を得たことがポイントだろう。

優れたヒドリド供与体として知られるベンジルエーテルを基質として用い、電子豊富な金触媒を用いて検討を行ったところ、1級ベンジルエーテルでは60℃加熱条件で、2級および3級エーテルでは室温にて速やかに反応が進行することがわかった。このように3級エーテルを用いた場合に反応がより低温で進行する理由として、Thorpe-Ingold効果によって分子内ヒドリドシフトが起きやすいような構造になっていると著者らは推察している。

アルキルおよびアリール置換の各種アセチレンに対して反応を行ったところ、中程度から良好な収率で目的物を得ている。さらに生成するアレンを求核種でトラップすることでさらなる合成法的有用性を提示することにも成功している。



著者らの提唱する分子内ヒドリドシフトの反応機構は、重水素ラベル実験、および混合対照実験で支持され、またThorpe-Ingold効果によっても支持されていると考えてよいだろう。上手に実験系を組み立ててあって、読みながら理解しやすい論文だった。

参考)Thorpe-Ingold効果:Wikipedia(EN)

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